安倍首相と内閣の声明

この自民党の委員会が修正案を用意したことと米国下院が H.Res.121 決議案(この決議案は2007年2月中旬に行われたアジア太平洋地球環境小委員会で行われたヒヤリングを含む)の検討を始めたことを受け、安倍晋三首相と内閣は2007年3月にいくつかの声明を出した。安倍の声明は日本国内において支持と批判を共に受けている。いくつかの声明は米国内からも批判を受けておりトーマス・シーファー米大使は、慰安婦制度に対する歴史的説明を修正することはアメリカにマイナスの影響を与えると警告している。オーストラリアとフィリピン政府も批判を行っている。安倍声明は以下の主要な特徴を含んでいる。

  • 慰安婦を雇用する際に「日本軍または政府」による「当初言われた強制があったことを支持する証拠はない」
  • 軍のために業者が明らかに強制的に採用した事例はあったが「憲兵が家屋に押し入り、誘拐のように連れ去った」ことはなく「慰安婦狩りが行われたとする証言は全くのでたらめである。」
  • 慰安婦の証言に関して安倍は2007年3月5日に「慰安婦狩りが行われたとする証言は全くのでたらめである」と報告していた。元慰安婦の証言は証拠と考えられないのかという野党議員の質問に対して安倍は答えていない。
  • 米国下院決議案 H.Res.121 の中で言われている意味では日本政府は慰安婦に謝罪をするつもりはない。

一方で安倍は日本政府は慰安婦問題に関してこれまでの日本政府の立場(「日本政府は多くの機会に慰安婦に対して謝罪を行ってきた」とする立場を含む)を継承するつもりであると発言している。

  • 安倍は「河野談話を支持する」つもりである。しかしながら安倍は2007年3月16日の内閣の声明は、河野談話が当時の首相宮澤喜一および1993年以降河野談話を継承してきた歴代の内閣によって公式には承認されていないことを指摘しており、河野談話を完全に受け入れるつもりではないようである。
  • 安倍は橋本と小泉を含む元首相の名前で出された、アジア女性基金の支援を受けた慰安婦への謝罪の手紙を支持している。「私は前任者たちと全く同じ気持ちを持っています。それはいささかも変わっておりません。」
  • 安倍は2007年3月26日の内閣での声明で「私はここに内閣総理大臣として謝罪する。慰安婦の方が置かれた状況に深い同情を申し上げる。」
  • 安倍はまた強制に関して自分の声明を部分的に修正している。「望んで慰安婦になった者はおそらくいなかったのだろう。広い意味での強制はあった。」
  • ブッシュ大統領との2007年4月3日の電話による会話の中で「安倍首相は、河野元官房長官の談話によって表されている日本政府の立場と矛盾していないことを認め、慰安婦の方が受けた計り知れない苦痛と困難に対する心からの同情と誠実な謝罪を表明した。」

安倍首相の声明と河野談話に基づく日本政府の立場の間の矛盾は安倍内閣から出された二つの対照的な声明を見ると良く分かる。2007年3月5日の声明の中で塩崎恭久官房長官河野談話慰安婦制度への日本軍の関与を認めたものであると発言した。塩崎は慰安婦の採用は「軍の要求に応えるように民間業者が主に行った」としながらも「時により軍が直接参加したこともあった」とし、採用に関しては「多くの場合本人の意思に反して行われた」と認めた。塩崎は政府が河野談話の主張を承認している立場にあるのは明らかであるとした。しかしながら彼の声明は2007年3月16日の内閣から出された声明と矛盾しているように見える。その声明の中で、塩崎は河野談話の基礎になった1991年から1993年に政府が使用した文書の再検討を行ったと発表した。その声明は「研究調査の対象になった資料の中には軍または政府機関がいわゆる強制連行を行ったことを示すどのような記述も発見できなかった」としている。

安倍は、河野談話を再評価しようとする自民党の有力者たちの意図にかなり肯定的な立場である。「党が調査研究を行うなら政府は必要に応じて資料を提供し、協力すると私は言われた。」